着物は日本の伝統文化です。洋服に比べて着るまでの手順が多く帯の結び方など覚えることも多いですが、その分着ていると一目置かれます。
社会人になって数年、懐に余裕も出てきたところで着物の着方の一つも覚えたいと思うようになりました。結婚した時、母から譲り受けた着物が数枚あったのですが、一生に一回着るだけではもったいないという思いも以前からありました。
自分で着付けができるようになれば少しは普段使いでも着られるようになるのではないかと思い、着付けを習う事にしました。着物に関しては、とんでもないど素人です。小紋と付け下げの格式の違いも知りませんでしたし、帯に種類があることも全く知りませんでした。
まずは家にある着物の種類を見て、教えてもらうところからのスタートです。
母の着物は振袖を除けば付け下げと小紋でした。それぞれに帯がありましたが、付け下げはもちろんフォーマルですが、小紋もどちらかというとフォーマル寄りの作りとなっていました。
母の時代の流行だったようです。そこでボーナスで普段着られるポリエステルの小紋と帯、下着以外の全てがついたセットをセールで購入しました。ぜひとも初詣は着物で行きたい!初詣に着物を着ることを目標に着付け教室のはじまりです。
私は決して、優秀な生徒ではありませんでした。物覚えは悪く、先生のスピードについていけないこともしばしば。美しい着付けとまではいきませんが、それでも何とか着物を着て、帯を結べるようになりました。しかし、覚えが悪すぎて初詣には間に合いませんでした。
そうはいってもせっかく着付けを覚え、安いとはいえ購入した着物。どうにかして着て出かけたいという思いがありました。同時に、着ないとすぐに着方を忘れるだろうという不安もあったのです。合わせの着物で冬向けのものだったので、暖かくなってしまうと着られません。
フォーマルな場なら着物で行っても良いだろうと思い、思い切って講演会に着物で行くことにしました。普通、着付けの時間は直しの時間も考えて1時間くらいを見るのですが、自分でやるので1時間半ほど余裕を持って何とか着ることができました。
いざ会場に着くと着物は私一人だけでした。目立ちます。そしてちょっと恥ずかしい。
しかし周りから「大和撫子って感じがする」と評されたり、全く知らないご年配の方から「素敵」と声をかけていただいたりしました。ただ着物を着ただけで、こんな風に知らない人と話ができるというのは驚きでした。着物は洋服と違って、流行り廃りが大きくなく、どんなものでもぱっと見て古臭く感じるという事がありません。
長く受け継がれてきたものを受け継いでいけるのは、やはり幸せなことだと思いました。母の小紋が似合う場所に出かけられるようになりたいものです。